東証によるROE革命とアクティビストファンド


栄で弁護士として活動している私は、企業法務や紛争対応を日々担う一方で、資本市場の動向にも注目しています。
近年特に関心を集めているのが、「ROE(株主資本利益率)」をめぐる東証の改革と、それに呼応する形で存在感を増しているアクティビストファンドです。

東証の「ROE革命」とは

東京証券取引所は上場企業に対し、資本効率を重視した経営を求めています。
特にPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業に対しては、「資本コストを意識した経営改善」を公に促す動きが強まっています(https://www.jpx.co.jp/news/1020/20230331-01.html)。
この流れは、単なる数値目標の設定にとどまらず、企業統治(コーポレートガバナンス)の在り方そのものに変化を迫るものです。

かつては「安定株主」によって守られていた経営陣も、いまや株主からの資本効率改善要求に向き合わざるを得ない時代となりました。

アクティビストファンドの台頭

こうした環境下で影響力を増しているのが、アクティビストファンドです。
彼らは上場企業の財務指標やガバナンス体制を分析し、資本効率の改善・余剰資金の還元・事業ポートフォリオの見直しなどを強く要求します。

実際、株主提案権や議決権行使を通じて経営に介入し、配当増額や自社株買いを実現させた事例は少なくありません。
時に経営陣にとっては厳しい要求となりますが、株価上昇や企業価値向上につながる場合もあり、一概に敵視できない存在です。

法務の現場から見えるリスクと対応

弁護士として企業をサポートする中で感じるのは、アクティビスト対応における「法務の重要性」です。

開示義務:コーポレートガバナンス・コードに基づく説明責任。IR資料や適時開示の不備は格好の攻撃材料となります。

株主総会対応:議案の準備、シナリオ想定、質問対応。形式的な準備ではアクティビストの鋭い追及に耐えられません。

M&Aスキーム検討:事業再編や資本政策が議論の的となるため、法的リスクの洗い出しは欠かせません。

コンプライアンス問題:不正会計や内部統制の不備は、アクティビストに付け入る余地を与えます。

実際に私が関与した案件でも、株主からの提案や質問に対し、「経営判断の合理性を説明する法的な根拠」を整える作業が重要となりました。経営陣の直感や経験だけでは、株主を納得させられない時代なのです。

おわりに

ROE革命とアクティビストファンドの存在感の高まりは、企業にとって脅威であると同時に、経営改善の契機でもあります。
弁護士としては、経営陣が短期的な圧力に振り回されることなく、法的裏付けを持った説明責任を果たしつつ、持続的成長につなげる道筋を描くことをお手伝いするのが使命だと考えています。

これからも、法律と資本市場の交差点で、依頼者の企業が安心して成長できる環境づくりを支えてまいります。

弁護士 向 洋輝


PAGE TOP